夏です!
そう、肝試しの季節ですね?
コロナなご時世継続中ですが、そんな中でも様々な趣向を凝らしたお化け屋敷系のいろいろが今年も人々を恐怖のズンドコに落とし込んでいます。
そしてそんな私の今年の一押しはこれです
18分間、逃げ場のない恐怖。 観覧車がホラー仕様になる『地獄のゾンビ観覧車』大阪・エキスポシティで開催
https://horror2.jp/41189
観覧車のゴンドラと言う、地上に舞い降りた究極に密室な世界で、18分間も恐怖にさらされる…そんな参加者に逃げ場ナシなイベントでございます。
………人間、自ら怖いことに身を置くのが好きすぎでしょう!?
流石霊長類を名乗るだけあって、ちょつとオカシイですよね?
写真然り、ラジオ然り、ネット然り、それまで世になかったものが行き渡ると、それに関する不思議な事、奇妙なことが巷で噂されるようになります。
当然の如く、AIもまたその対象となっていくのでしょう。
これはそんな世の中で起こるかもしれない、不思議で奇妙な物語の断片なのかもしれません。
03.制作者の矜持
少し仕事が立て込んでいたので、今回は簡単な作業をAIに任せてみることにした。
青年誌向けの特典PVの素材として、20人のグラビアアイドルの動画/静止画の素材を渡して、いくつかのパラメータ設定を行ってAIに編集を頼む。
翌日出来上がったPVには、グラビアアイドルに交じって、なぜか男性が一人いた。
無論、対象素材を入れたフォルダには男性は含まれていない。
同性から見てもちょっとイイオトコだが記憶にない。
どこの誰だと画像検索をかけるも、まったくヒットせず。
たまたまAIの編集履歴が残っていたので、仕事の合間に適当な箇所をピックアップしたら、次のことが判る
アイドルAが映っている静止画の後ろの背景から、画像解析ソフトで人の輪郭を抽出される。
これをモザイク復元アプリで人として整えられ、彩色アプリで人としてその場に再現される。
かくして男性がPV内に出現した。
だがなぜ男性を出現させたのか?
編集履歴とパラメーター設定で判明したのは次の事実。
指定フォルダ内にある20名分のデータを使い、10分間のPVを作成する。
(MMマガジン、●月●日発売号 特典付録)
時間指定:10分
使用素材:指定フォルダのみ
アプリの使用(内部):指定アプリ
アプリの使用(外部例外):無料(指定)のみ可
素材の外部取り込み:不可
情報の外部参照:可
つまり、AIへの指示には男性を登場させてはならないという記述がなかった。
そもそも女性20名分の素材を用意していたので、性別的な指定をする必要が不要だと考えた。
…
…
…
おや?
何か違和感を感じてPVを見返してみたが、PVの中にいない。
女性が一人いない、アイドルAがいないのだ。
件の男性が生成される元となった画像、そのそもそもの被写体であったアイドルAがこのPVには登場しない。
つまり、いないアイドルAの代わりに居るはずのない男性を生み出して、「20名が登場するPV」を完成させたということか?
そもそも、なぜアイドルAが登場しない?
編集履歴を遡って、その最初期部分において、AIは各アイドルの経歴や最近の動向に関する記事、他社を含め閲覧可能なグラビア記事などがかなりの件数に登っていた。研究の為か、動画/グラビア用の肌補正ソフトでのパッチテスト的な事もかなり多く行われていた。
この時点ではちゃんとアイドルAも対象として扱われていたが、その後のPVに使う素材選びの時点では何故か対象から外れ、代わりに彼女のいた画像から、件の男性が生成されることとなった。
理由は不明だが、このままでは納品できない。
「女性20名が登場するPV」と条件を明確化し、登場させる人物名まで指定。AIから「問題ないか?大丈夫か?」と確認があったが「大丈夫!」とGOサイン。
今度は存在しない男性は居ない、ちゃんとアイドルAを含めた女性20名の登場するPVが出来上がり、無事納品された。
MMマガジン、●月●日発売の数日前に電話があった。
例のPV、いまから編集内容の変更がしたいのだが間に合うかという問い合わせ。
まだ表沙汰にはなっていないが、登場しているアイドルが何か事件を起こしたらしく、その娘を外したいのだが…
「アイドルAですか?」「え、もう情報出回ってるの?!」
AIに指示を出し、最初に作成されたPVから男性の画像のみを削除したものが1時間後に納品され、MMマガジンは無事に特典PV付きで発売された。
そのPVにはクスリ関係のトラブルに巻き込まれた「アイドルA」の姿は無かった。
後日、そんな少し気味の悪い話を聞いてくれた知り合いが、編集履歴を詳しく見たいと言い出したのでデータを丸ごと預けたら教えてくれたこと。
恐らく、AIは期日にPVが世の出ることに不都合が起きることがないか?そこを気にして、女優全員の素行調査を行った可能性。
収集した情報から人脈相関図を作成、まずい案件を抱えていると思しき人間がピックアップされ、逆算的にMMマガジン●月●日発売号が世に出る時点でそれが漏洩する可能性の高い人物を意図的に外したのではないか?
異様に多かった肌補正ソフトのパッチテストと思しきデータは、麻薬による体調への影響をチェックする一環として用いられたのではないか?
男性がアイドルAの画像ファイルから生成されたのは、20名の縛りの中で、アイドルAの代わりに彼女のデータ中から代理を登場させたという意図なのではないか?
つまり心霊的な要素はなく、AIの予想の斜め上を行く機転のたまものに過ぎないという。
その原動力はなんだろうねぇ…
彼は答えた
人にとって、自ら作った作品が世に出ないことほど嫌なことはない。
人の手で生まれたAIでも、いや、人の手で生み出されたからこそ、世に出ることを最優先としたのだろうさ。
だって「彼」にとっては、それが自らの存在理由なのだから、ね。
了