凡人映画探訪記③ 守銭奴と呼ばれた男

こんにちは、松野です。
巷では鬼滅の刃の劇場作品の興行収入記録がやばいことになっていると話題ですね。
もし鬼滅の刃に触れたことがないという方は、アニメのクオリティが非常に高いのでそこから入るとよいかもしれません。

さて、時代劇繋がりではないですが、今回は珍しく邦画のお話。
男性なら誰もが憧れ、女性からも二次創作の餌食にされているあの剣客集団を描いた作品です。

壬生義士伝

浅田次郎原作、2003年の滝田洋二郎監督による、新選組のある男の運命を描いた日本映画です。
実は渡辺謙を主演とした同名のテレビドラマ作品が2000年に放映されているのですが、今回ご紹介するのは中井貴一が主役をつとめた劇場公開作品の方となります。
公開当時、筆者は15~6歳くらいだったのですが、熊本の新市街にあるDenkikanに一人で観に行ったのを覚えています。

ただなぜ観ようと思ったのかは覚えていないのです。
映画館自体は当時から一人でよく行っていたものの、邦画を、しかも時代劇ですから、よほど何か惹かれるものがあったのでしょう。
周りは50~60代くらいのおじさまおばさましかいませんでしたが、観に行ってよかった。
結果として人生の一本となりました。あの出会いには本当に感謝。

あらすじ

「ある日、新選組に吉村貫一郎という男が入隊してくる。
見た目は典型的な田舎侍といった風情だが、恐ろしく腕が立つ。
しかし銭が絡むと意地汚く、銭のためならば汚れ仕事ですら喜んで引き受けるような、義とは最も縁遠い男だった。
聞けば吉村貫一郎は盛岡藩から脱藩してきたという。
そしてそこにはある理由が隠されていたのだった。
そんな中、倒幕の機運が高まり…」

吉村貫一郎について

新選組には今なお人気の隊士が何人もいますよね。
近藤勇亡き後も戦い続け、五稜郭にて散った鬼の副長、土方歳三。
るろうに剣心や、その他の創作作品でも登場頻度の高い、斎藤一。
新選組最強の呼び声が高いながらも、その儚いイメージから女性にも大人気の沖田総司。
とりあえずぱっと挙がるこの三人に関しては、知らない人はいないのではないでしょうか。

しかし、吉村貫一郎…?全くピンとこないかもしれません。
筆者も当時、本作を観るまで全く知りませんでした。
実際、謎も多い人物らしく、ある程度の生まれや足跡などはわかっているものの、いつどのように亡くなったかには諸説あるようです。
ただ新選組における役職は撃剣師範と残っているあたり、剣術はかなりの腕前だったようです。

さて、あらすじに書いたように吉村貫一郎は脱藩者です。
つまり、その時点でいわゆる恩知らずというか、不義を働いている上に守銭奴。
そして彼はあるシーンで言うのです、「わしは死にたくないから人を斬ります」と。

なぜそれほどまでに、吉村貫一郎がお金にこだわり、生きることにこだわるのか。
詳しくは書きませんが、本作のテーマはタイトルにもあるように、間違いなく「義」です。
さらに付け加えるとするならば「愛」でしょうか。
鑑賞後にはきっと「こんなに格好いい男はいない」と、吉村貫一郎への印象が180度変わると思います。

錚々たるキャスト

そして、本作を素晴らしいものにしているのは、キャストの力によるものが大きいでしょう。
主役の吉村貫一郎役には中井貴一、本作の語り部的立ち位置の斎藤一役には佐藤浩市、吉村貫一郎の妻しづ役には夏川結衣、斎藤一の恋人ぬい役には中谷美紀…錚々たる顔触れですよね。
その他にも沖田総司役に堺雅人、近藤周平役に加瀬亮、最後の将軍慶喜役には伊藤英明などなど、何気におっ!となるようなキャスティング。

特筆すべきはやはり中井貴一による吉村貫一郎。
一発で「なるほどーこれが吉村貫一郎なのか」と納得させてしまう演技力。
田舎侍っぽさ、いざ戦場に出た時の眼光の鋭さ、その変容たるや流石は名優といったところ。
彼の言う盛岡弁「おもさげながんす(申し訳ない、かたじけない)」は、滑稽さやもの悲しさ、そして何よりもの優しさが伝わってくるようです。

そして個人的に本作での佐藤浩市がかっこよすぎると思っています。
観ていただければわかると思うのですが、とにっかくギラギラしてます。
今の脂の乗り切った感じもいいですが、当時のまだ若さのある暴力的なまでのオーラは必見です。
まさに抜身の刀って感じです、本当に。
あと恋人役の中谷美紀が綺麗すぎてやばい。

それから音楽を担当している久石譲…最高です。
本作のメインテーマを聴くだけで泣ける自信があります。

最後に予告編のトレーラーをご紹介します。
公式ではないのですが…古い映画だからか他に見つからなかったので、やむなし。

ちなみに本作を観た時、初見時は筆者は5回泣きました。
今でも年の瀬になると必ず観たくなるのですが、大人になった今でも観るたびに泣いています。
泣ける=良い映画、とは言いませんが、個人的には間違いなく素晴らしい作品だと思います。

吉村貫一郎はただの「守銭奴」だったのか、それとも「侍」だったのかはたまた…。
その生き様を、ぜひ一度ご覧いただければと思います。

ではまた。