凡人映画探訪記② ミステリーの様式美

こんにちは、松野です。

さて、今回も映画のお話。
わりと最近の映画なのですが、かなり巧妙に作られていて面白かったので、ご紹介です。

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

最近、Netflixで配信開始されたので、鑑賞しました。
本作は2019年のアメリカのミステリー映画で、日本では今年2020年の頭に公開されました。
公開当初、ぼくはもうキャストをみただけで観たくて堪らなかったのですが、とある事情で見逃していたんですよね。
公開スケジュールを勘違いしていて観に行った時には既に公開終了していたとかいう間抜け。

あらすじ

「世界的ミステリー作家にして大富豪のハーラン・スロンビーが、85歳の誕生日パーティの翌朝、遺体で発見される。
容疑者はパーティに参加していたハーランの家族や看護師、家政婦全員。
そんな中、名探偵ブノワ・ブランは匿名の人物から依頼を受け、この事件の解明に乗り出すことになる。」

まずこのあらすじを読んで、ミステリー小説や映画を好んで嗜む方は、どこかで見たことある感じだなーと思ったかと思います。
かくいうぼくも、これまんまアガサ・クリスティのオリエンタル急行殺人事件やんけ!と思いました。(笑
それもそのはず、この作品はアガサ・クリスティへのオマージュとも言われていたりします。
密室での事件、当事者全員が容疑者、そして名探偵による捜査…これはもはやミステリーの様式美ですよね。

ただ個人的に画期的というか、面白いなーと思ったのは、その撮り方でしょうか。
この作品、当事者の回想等により、実は序盤に観客は事件の大まかな全容がわかるようになっています。
そしてある時点からは、探偵と、ある一人の容疑者の両方の視点で描写され、中盤以降はむしろその容疑者の視点が多くなっていきます。

つまり、観客はミステリー作品としてはかなり俯瞰した視点で物語を追うことになるのですが、それがなんとも不思議な感覚をもたらします。
序盤で事件の顛末がほぼ描かれているにもかかわらず、なんだか釈然としない感じがあるのです。
劇中でも探偵ブランが「ドーナツの穴の中のドーナツ」と比喩するとおり、どんなに隙間を埋めても完全には埋まることのない空白の真実が、たしかにそこにあるのです。
これがなんとも不思議で、面白い。

ちなみに監督・脚本はジョゼフ・ゴードン・レヴィットの「LOOPER/ルーパー」や「スターウォーズ/最後のジェダイ」のライアン・ジョンソンなのですが、アクションだけでなくこんなミステリー作品も撮れたのか!と思って驚きました。

豪華キャスト

そして、なんといっても本作の大きな魅力として、豪華なキャストが挙げられるでしょう。
「007」の現ジェームズ・ボンドでお馴染みのダニエル・クレイグ、キャプテン・アメリカ役で一躍大スターとなったクリス・エヴァンス、筆者も大好きな名優クリストファー・プラマー…等々、キャスト陣の名前をみただけでも「これ絶対面白いやつや!」ってなっちゃうレベルですよね。

個人的に嬉しかったというかウヒョー!ってなったのは、ジェイミー・リー・カーティス…もうめちゃくちゃかっこいい。
1978年にホラー映画「ハロウィン」でデビューした彼女ですが、2018年にその40年後を描いた同名作品に同じ役で出演するという、最高のファンサービスを披露してくれました。
「ハロウィン」では最高に強くてクレイジーなおばあちゃんを演じていましたが、今作でも常にタバコをくわえたバリキャリ女社長といった感じで最高にかっこいい。

そしてもう一つの見どころは、MCU作品では良心と善意、正義の象徴であるキャプテン・アメリカを演じていたクリス・エヴァンスの役どころ。
本作ではいわゆるク〇野郎を演じています。
これがなかなかどうしてハマり役で、懸念されていたキャップイメージからの脱却は意外とすんなり出来そうですね。
予告トレーラーでも使われている「ワーオ」のシーンの憎たらしさは必見です。(笑

惜しむらくは、ダニエル・クレイグの出番やセリフがさほど多くなかった点でしょうか…。
ダニエル・クレイグは筆者も最も好きな俳優の一人なので、この作品での彼をもっともっとみたかったなーというのが本音ですね。
作品を最後まで観ると、本作の主人公が決して彼だけではなかったことが理解できるので、まぁ仕方がないんですけれども。

数多くのオマージュ

ちなみに、この作品には実はアガサ・クリスティ関連以外にも様々なオマージュが隠されていたりします。
作中の無数のナイフのオブジェ=ゲーム・オブ・スローンズ、ナイブズ・アウトというタイトル=UKバンド:レディオヘッドの楽曲名等々…サブカルチャーに傾倒している方なら「おっ」となるものばかりなので、探しながらみるのも楽しいかもしれません。
筆者は初見でオマージュと気付いたものは10個ちょっとでした…修行が足りん!(笑

締めくくりに、例のごとく予告編をご紹介します。
というか、サムネイルがひどい。(笑

ストーリーの描き方がとても上手く、かつテンポは非常に良い上に、見えてくるテーマも希望あるものなので最後まで楽しく鑑賞することができました。
作品の雰囲気も暗くなく、むしろウィットに富んでいて妙にハイテンションなので、普段ミステリーに触れない方にもオススメです。
ぜひ一度、ご覧ください。

ではまた。