凡人映画探訪記⑤ 一族、そして北欧の闇

こんにちは。松野です。
ここ数日、あまりの寒さにスタッフが手を擦り合わせる音がそこかしこで鳴り響いております。
今年もあと2週間足らず、元気に年を越せるよう体調には気を付けていきましょう。

さて、今回は映画のお話。
結構、有名な映画かと思うのですが、個人的にはたぶん人生の中で10本の指に入るんじゃないかなぁというくらい好きな作品です。
まぁ、残酷描写や性的描写等も中々に激しい映画なので人は選ぶかと思いますので、自己責任で。
とはいえ、ヒットメーカーなあの監督作品ですから、面白さはお約束します。

ドラゴン・タトゥーの女

2011年のアメリカ映画で、監督はデヴィッド・フィンチャー。
デヴィッド・フィンチャーといえば、撮る作品撮る作品軒並み面白いという名監督ですね。
「ファイト・クラブ」や「セブン」に「ソーシャルネットワーク」、サブカルチャー好きなら絶対に観るべき隠れた名作「ロード・オブ・ドッグタウン」などなど…彼の撮った名作を挙げだすとキリがありません。

そんなデヴィッド・フィンチャーが撮ったミステリー、それも世界的小説の映画化ですから、面白くないはずがない!
筆者もかれこれもう20回は観てるような気がします。
オープニングで流れるイメージと、バックに流れる「移民の歌」は最高にイカしてます。

あらすじ

大物実業家のスキャンダルをスクープし、名誉毀損で訴えられ裁判で敗訴し全財産を失い、失意の中にあるジャーナリストのミカエル。
そんな彼にある日、別の大物実業家からある依頼の電話がかかってくる。

「一族の謎を解明してくれないか」

その謎とは、40年前に行方不明になった少女のことであり、一族の誰かに殺されたという。
そして、謎の究明と引き換えに裁判判決を逆転させるような証拠を渡すという。

ミカエルは、ドラゴンの刺青をした天才女ハッカー、リスベットとともに捜査を進める。
そして謎を追う中でミカエルは、一族の秘密を知ることになる。

ツボすぎるキャスト

上記のあらすじだけでも、刺さる人には刺さると思います。もうワクワクしますね!
そして本作、キャスティングがとにかく素晴らしい。

主人公ミカエル・ブルムクヴィスト(噛みそう)を演じるのは、ご存じダニエル・クレイグ。
以前ご紹介した「ナイブズ・アウト」でも主演でしたが、やはり彼の代表作は「007」シリーズでしょう。
甘いマスクでニヒルなボンド像をぶち壊して、ガチムチ激渋な男が惚れる男なボンド像を作り上げた功績は大きいでしょう。

そんな彼は今回は記者役ということで、体重をがっつり落とし、撮影に臨んだそうです。
作中でも彼の醸し出す雰囲気は、くたびれた大人の哀愁といった趣。
ともあれ、やはりダニエル・クレイグは最高にカッコいいですね、というかエロい!

そして絶対に外せないのが、主人公ミカエルの相棒リスベット・サランデル(また噛みそう)を演じる、ルーニー・マーラ。
キャラがたっている作品は良い作品だと言われますが、これでもかというほどのキャラだち。
逞しく超有能だけど、たまに見せる少女らしさが可愛らしい…本当に魅力的です。

まぁ、個人的にルーニー・マーラがどタイプすぎるのもあるのでしょう。(笑
役を演じていない時はどちらかというと清楚、でもリスベットは超パンク。
もしかすると、そのギャップにやられたのかもしれません。
彼女の出演作品も良い作品が多いので、ぜひチェックしていただければと思います。

そして脇を固めるのが、「ナイブズ・アウト」のクリストファー・プラマーや「マイティー・ソー」でもお馴染みのステラン・スカルスガルドなどなど…。
それぞれしっかりとツボを押さえた配役で、作品に華を添えています。

原作

そしてなんといっても、原作が面白い。
本作のタイトルは「ドラゴン・タトゥーの女」ですが、実は原作ではこれは副題。
原作のタイトルは「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」となります。

上下巻3部作、計6冊からなる作品なのですが、本作で映画化されているのは1部の「ドラゴン・タトゥーの女」。
スウェーデンの作家、スティーグ・ラーソン氏が執筆した小説なのですが、恐ろしく面白い。
1冊400~500ページと中々のボリュームなのですが、筆者は2週間足らずで読了しました。
読みだすとページをめくる手が止まらないやめらない。
元々、読書はする方だとは思うのですが、あの感覚になれる作品はそう多くありません。

しかし、原作「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」はただ面白いだけの作品ではありません。
ストーリーの中に、企業の腐敗、凄惨な幼児虐待、異常者による性犯罪、異人種の移民への抜きがたい差別意識、弱者に対する過酷な仕組みなどスウェーデンのみならず世界各国が抱える社会問題を取り入れていることも注目すべきポイントかと思います。

プロローグの後、最初の1ページに「スウェーデンでは女性の18%が男に脅迫された経験がある」の一文が入っていることからも、作者の信念が感じられます。
機会があればぜひ原作も手に取っていただきたいと思います。

それでは最後に、例のごとく、トレーラーをご紹介します。

さて、個人的に大好きな映画なので、いつにも増して長くなってしまいました。

惜しむらくは原作者が既に故人であることと、デヴィッド・フィンチャーはもう続編は撮らないと公言していることでしょうか…。
一応、続編にあたる「蜘蛛の巣を払う女」が別監督で別俳優で、2019年に公開されましたが、あれは正直イマイチだった…。
まぁ、皆年齢も重ねてしまっているし、さすがに難しいのでしょうが、もっと観たかったなぁと思います。

とはいえ、本作は非常に上質なミステリー作品となっております。
ちょっとショッキング、特に女性には抵抗のあるシーンも多い作品ではありますが、興味がある方はぜひ一度ご覧ください。

ではまた。