凡人映画探訪記① ある天才数学者の物語

こんにちは。松野です。
今日は自宅のPCの調子がすこぶる悪く、4回のクラッシュを経て、5回目の起動でようやく安定した中ヒヤヒヤしながら書いています。
先日、弊社のPCマスター杉本氏にも話したのですが、筆者は10年前の化石スペックPCにそこそこのグラフィックボードを載せて、老体に鞭打ち無理やり使っている状態なのです。
どれだけ老体かというと、搭載CPUソケットがLGA1366だといえば、わかる人にはヤバさが伝わると思います…長年連れ添った相棒とのお別れの日は近いようです…うう…。

さて、本日は久々?の映画紹介。
冒頭でPCの話題を挙げましたので、コンピューターにまつわる…というよりコンピューターAIの礎を築いたある天才の伝記的映画をご紹介したいと思います。

イミテーション・ゲーム

今回ご紹介する映画は「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」という作品。

皆さんはアラン・チューリングという人物をご存じでしょうか。
アラン・チューリングは知らなくても、「チューリングテスト」というのは聞いたことがある方は多いかもしれません。

チューリングテストとは、一言でいえば「そのAIが人間的かどうか」を判断するためのテスト…なのですが、本作ではさほど触れられていません。
ではこの映画ではなにを描いているのか?
重要なキーワードとなるのは、邦題の副題にもなっている「エニグマ」。

時は第二次世界大戦の最中、イギリスをはじめとする連合軍はご存じのとおり、ナチス・ドイツによる侵攻には苦しめられていました。
ではなぜナチス・ドイツがそれほどまでに猛威を振るっていたのか?
その強さの一つに「エニグマ」と呼ばれる暗号がありました。

エニグマとは

エニグマとは「謎」の意で、主に第二次世界大戦でナチス・ドイツが用いた暗号機と、その暗号機によって作成される暗号のことをそう呼びます。

文献を読むとローター式だとかM-209がどうだとか色々書いてあるのですが、要は解読がめちゃくちゃ難しい暗号ということです。
というか、もはや人間ではほぼ解読は不可能だと思われていた代物です。

第二次世界大戦のあの時代に、自分たちにだけ理解できる言語で超長距離間での情報共有が可能だったわけですから、どれだけの強みだったのかは想像に難くないと思います。
第一次世界大戦で、情報戦を軽んじたことにより大敗を喫したドイツが、エニグマを手に入れ情報戦で復讐するという、なんとも皮肉な話です。

アラン・チューリング

さて、そんな最強の暗号に連合軍が翻弄される中、イギリスでは国内中の数学者や言語学者が集められ、エニグマの解読に挑むチームが組まれることとなります。
もちろん、史実でのナチス・ドイツの末路をみればわかることなので書きますが、結果としてイギリスはエニグマを破ることに成功し勝利します。
そのキーマンとなるのが、この映画の主人公であるイギリスの数学者、アラン・チューリングなのです。

映画の主な内容は前述のエニグマ解読とそれに付随する人間ドラマなので、あまり書くことはないというか、そもそも史実という壮大なネタバレがあるので。(笑
彼の功績についてほんの少しだけ触れようと思います。

チューリングテストとは

昨今、コンピューターと人間はかなり自然なレベルで対話が可能になっています。
あなたも毎日、呼び掛けているのではないでしょうか、「Hey Siri」と。
その対話可能なコンピューターに関して、外すことのできない話題があります。

それが「チューリングテスト」です。
チューリングテストは、1950年にアラン・チューリングが提唱しました。
簡単に言えば機械(AI(人工知能))がどのように人間を真似するのかを対話しながら測る実験です。

まず判定者(人間)は、相手が見えない状態で、機械または人間と対話します。
終了後、判定者は先程まで話した相手が人間か機械かを当てます。
最終的に人間の判定者が、どちらが人間か判別できなければ、その機械は「知能がある」と判定されるというものです。

テストに合格したAI

2014年6月7日、ちょうどアラン・チューリングの没後60年後に、あるチューリングテストが実施されました。
なんと、そこでテストを通過するAIが現れたのです。
それは、ロシアのスーパーコンピュータ「Eugene(ユージーン)」。
このEugeneとチューリングテストで対話した判定者のうち、3割がAIと見抜けなかったのです。
もちろん、ある仕掛けがあったせいでもあるのですが。

本来チューリングテストは、AIが知能を持っているかどうかを判定するために行われるものです。
しかし、Eugeneには、「ウクライナ人の少年」という、特定の人物を演じるように設計されていました。
判定者はEugeneに対して英語で話しかけたので、母国語でない英語をたどたどしく話す様を、判定者が人間らしいと感じてしまったことも原因の一つとされています。

現在は一部の研究者は、チューリングテストをAI(人工知能)の評価手法として利用していないそうです。
しかし、チューリングテストの認知度が高いことから、テストの内容を実用的なものへ変えて利用しようという動きもあるそう。

このように、彼が提唱したチューリングテストが、当時とは比べ物にならない程に科学が発達した現在も使われていることから、彼の遺した功績は偉大なものだとお分かりいただけると思います。
エニグマの解読は、あくまで彼の功績のごく一部であるといえるのです。

ベネディクト・カンバーバッチ

さて、そんな名実ともに天才数学者であるアラン・チューリングを演じるのは、筆者も大好きベネディクト・カンバーバッチ。
MARVELの「ドクター・ストレンジ」や海外ドラマの「シャーロック」などでお馴染みですよね。
ちなみに実は彼、元はシャイクスピア俳優だったりします。

筆者が最初に彼を認識したのは、「ホビット」のスマウグ(ドラゴン)の顔のモーションと声をやっていると知った時でした。
決定的に好きなったのは「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の時でしょうか。
敵役だったのですが、主演のクリス・パインを完全に食うくらいに格好良くて、一気にファンになりました。
いわゆる男前、ではないのですがあの目の演技と独特の低い声、また本人のチャーミングなキャラクターもファンが多い理由かと思います。

イミテーション・ゲーム劇中でも、孤高の天才、同時に変人という難しい役を見事に演じきっています。
こういった作品に興味がなくとも、カンバーバッチファンなら観ておくべき一本だと、個人的には思っています。
あとアレクサンドル・デスプラ(ハリポタの死の秘宝や英国王のスピーチなんかも手掛けています)によるサントラも最高です。
最後に予告動画をご紹介します。

さて、例によって非常に長くなってしまいました。
映画紹介、といいつつアラン・チューリングやエニグマのうんちくしか書いてないような気がしますが。(笑

ともあれ、エニグマ解読成功の裏にあった人間ドラマとアラン・チューリングの抱えるある秘密、そんな彼の物語は一見の価値ありです。
アラン・チューリングの実際の人間性は知る由もありませんが、少なくともベネディクト・カンバーバッチ演じるアラン・チューリングはとても美しく、哀しく、そして切ない。
この作品を観た後には、彼がこの世界に遺したものに想いを馳せざるを得ません。

史実を知っている人も、知らない人も、一度ご覧いただけばと思います。
彼がいなければ私たちが暮らすこの世界は、情勢的にも科学的にも全く違ったものになっていたのかもしれないのですから。

 

と、最後に豆知識というか、Apple信者が「ほー!」となるかもしれない話をひとつ。
iphoneのSiriに「イライザ」という人物について尋ねると、興味深い反応が返ってきます。(某都市伝説番組でも紹介されていましたね!
実は前述の「Eugene(ユージーン)」よりもずっと前、1966年にチューリングテストを受けたAIがいるのです。

ここまで言えば察しがつくかもしれませんが、そのAIの名前こそが「ELIZA(イライザ)」。
そう、AIの祖といえるELIZAを介し、時を超えてアラン・チューリングとAplleが繋がってくるのです。
この仕掛けは、AI概念の祖であるアラン・チューリングへの、Aplleなりの敬意の形なのかもしれませんね。

ではまた。